こんにちは。花祭窯おかみ&アートエデュケーターふじゆりです。
『くまのプーさん』を初めて読んだのは小学校低学年の頃だったと思います。それから大人になるまで、大人になっても、たびたび本を開いています。登場人物(ほとんどが動物ですがこの言葉を使いますね)の個性、挿絵、セリフ、文章のことば選び…すべてに夢中になりました。現在、いろいろな種類の『くまのプーさん』が出ていますが、わたしにとってのプーさんは、E・H・シェパード氏の挿絵と、石井桃子さんの日本語訳で彩られた世界です。
と、熱く語ってしまうほど、思い入れの強い一冊。この感覚はとても個人的なものなので、魅力をわかりやすく伝えるのは難しいのですが、言葉にしてみますね。
まず登場人物たちは皆、長所も短所もひっくるめて、常に自分らしく存在しています。本人たちは、あえて「自分らしくあろう」と考えたりはしていないと思いますが、言うことも行動も、とても「らしい」のです。そして、そうした「らしさ」が引き起こす小さな(当事者たちにとっては、ときに大きな)事件が日々あり、それを解決しようとする懸命な姿が、たまりません。主人公たるプーをはじめ、一人一人は、決して器用ではなく、一生懸命考えたり、知恵を拝借したり、協力を求めたり。「こんなとき〇〇がいてくれたら」「○○だったらどうするかな」と、仲間の顔がすぐに頭に浮かびます。
『くまのプーさん』には、個性豊かな面々の、そのままの在りようを当たり前に受け入れる世界があります。受け入れ、受け入れられる安心感・温かさが、なにより魅力なのだと思います。そしてもう一つ、幼い子どもの頃に自分にもあったはずの「今この時がすべて」な感じが、ある種の郷愁を感じさせるのかもしれません。
少しでも伝わったら嬉しいな、と思いつつ、お疲れ気味の大人の皆さんに、おススメの一冊です。
花祭窯おかみ・ふじゆり(藤吉有里)
「古伊万里」の名で知られる肥前磁器の伝統工芸文化、技術を基にした窯元「花祭窯」のお内儀。おかみとして窯を支えつつ、自らもアートエデュケーターとしてMeet Me at Artを主宰する。
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