その50「ラジオ」

こんにちは。花祭窯おかみ・ふじゆりです。

皆さんは、ラジオを聴く習慣はありますでしょうか。わたしはふだん、パソコンの前で仕事をしていることが多いのですが、毎朝起きるとまずパソコンの電源を入れ、インターネットでラジオをつけるのが、ここ10年ほどの習慣になっています。

この10年の間に、スマホを音源として楽しむことは当たり前になり、スマートスピーカーが登場し、ラジオや音楽を楽しむ環境が、どんどん充実してきていますね。わたしはいまだ「パソコンからラジオ」派です。

「パソコンからラジオ」最初のきっかけは、NHKラジオ放送の「らじるらじる」で、英会話を勉強しよう!と思ったことでした。が、これが続きません。そのうちインターネットで日本国内のラジオ放送を聴くことが出来る「radiko(ラジコ)」サービスがはじまりました。

ラジコで、バイリンガルのラジオパーソナリティが番組を構成するローカルFM局を発見。お天気・時事・スポーツなどのニュースを、番組に関わらずほぼ毎回英語と日本語で届けてくれるので、勉強にもなるはず!と、こちらを聴くようになりました。仕事でロンドンとのやり取りがはじまると、BBC(英国放送協会)ラジオがインターネットで聴けることを発見。こちらは当然ですがすべて英語です。現在は、ラジコとBBCを時間帯により聴き分けています。いずれも音楽と英語の組み合わせ。ラジオをつけているだけで、BGMで英語の勉強になっているような気がして、自己満足しています。

ラジオは、聴く人と聴かない人が、かなりはっきり分かれるメディアだと感じます。それは、昔からそうだったかもしれません。わたしのラジオ習慣は、遡ること小学校高学年時代に始まっていますが、当時ラジオ番組の話題を共通言語として話せる友人はごく少人数でした。ただ、少人数であったがゆえに、濃い話題を交わせたとも思います。わたしの場合、幼かったころに母がラジオを聴きながら家事をする人でしたので、身近にラジオ文化がありました。今考えると、これはありがたいこと。

テレビを見ない人が増えているという昨今、ラジオ人口はさらに減少しているのではないかと思います。インターネットで自分の好みの情報や音楽を一本釣りできる環境では、ラジオはもしかしたら「無駄の多いメディア」にみえるかもしれません。けれども、その一見無駄にみえる部分には、自分が意図しなかったものにアクセスできる余地があるということで、そこが豊かさにつながることがあるのではないかと思ったりするのです。古い考えなのかも知れませんが。

<日常の禅語>月在青天水在瓶(つきはせいてんにあって みずはへいにあり)

禅語には、月にちなんだものがたくさんあると言われています。そういわれても、すぐには思い浮かばないのが、素人たるわたしなのですが…。そういえば、禅僧であり書画をたくさん遺している仙厓(せんがい)和尚の有名な画には、月が登場する『指月布袋図』があります。この「日常の禅語」コーナーでも、以前に『指月布袋』を解釈したことがありました。興味のある方は、バックナンバー遡ってみてくださいね。

さて「月は青天に在って、水は瓶に在り」。「月は青い空に煌々と輝いていて、水は瓶のなかに静かに収まっている」ということ。すなわち「あたりまえのこと」です。天邪鬼的に考えれば、月が出ている夜ならば、空は青いというよりは濃紺というか黒に近いのではないかと思ったり、もし瓶のふたが開いていてその水面に月が映っていたら、月は瓶のなかにあると言えるかもしれない…とも思いますが、それはさておき。「あたりまえのことを、あたりまえに見て取る」ことの大切さを説いています。

見るがまま、聞くがまま、在るがままを、あるがままに見て取ることの難しさと、大切さ。このことは禅語のなかで、エピソードをさまざまに用意して、いろいろな言い方で、何度も繰り返し説かれているように思います。初めて出会った禅語でも、その意味を探ると、同じところに辿り着くことがしばしば。それだけ基本となる大切な姿勢なのでしょう。「あるがままに見て取る」ことが出来るようになるには、美術鑑賞による訓練が力を発揮します。

絵画を見るとき「なにが、どこに、どのように」描いてあるのかを確認していく訓練は、対話型美術鑑賞の基本。ひとつひとつをじっくり意識していくと、それまでとは絵の見え方がまったく変わることを体感することが出来ます。その第一歩は、絵画のタイトルやキャプションを読むのをやめること。第三者による文字情報や先入観を遮断し、絵そのものを見ていくことが、「あるがままに見て取る」ことにつながります。そう考えると、意外と身近なところで禅の訓練は出来そうな気がしてきます。


花祭窯おかみ・ふじゆり(藤吉有里)

「古伊万里」の名で知られる肥前磁器の伝統工芸文化、技術を基にした窯元「花祭窯」のお内儀。おかみとして窯を支えつつ、自らもアートエデュケーターとしてMeet Me at Artを主宰する。

花祭窯(はなまつりがま)
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