その33「手帳」

こんにちは。花祭窯おかみ・ふじゆりです。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

一年の計は元旦にあり。皆さん、目標や計画は立てましたでしょうか。最近はスマホでスケジュールを管理しておられる方も多いと思います。便利なアプリがたくさん出ているようですね。周りを見ると、日毎のスケジュールだけでなく、短期・中期・長期での計画もスマホアプリで管理しているというお友だちが増えてきています。

わたしはといえば「紙の手帳」を使い続けています。常に持ち歩く手帳は、大切な相棒。7~8年前に革職人のお友だちに手帳カバーを作っていただいて以来、手帳への愛着はさらに増しています。「手帳カバーをオーダーでつくったら高くありませんか?」と聞かれることがありますが、毎年中身だけ買えばよいので、長期的に見てコストパフォーマンスが良いとわたしは思っています。「手帳選びにかかる時間」が大幅に短縮されたのも大きいです。「お気に入りの良いものを長く使いたい」方にはおススメです。

手帳には、スケジュール以外にも「いつでも開けば目に入る」ように、自分にとって大切な言葉や文章を書き留めています。今年の目標や計画は、その筆頭。その他、茶道(=生き方)の指針である「利休七則」や「茶道訓」、毎年事業初めにつくる「経営指針書」の内容、自分自身のリソースの覚書などなど。毎年少しづつ変わりますが、何年もの間、書き継いでいるものが多いです。万年筆で書き込みながら「自分仕様」に手帳を整えていくことは、新年をスタートするにあたっての儀式のようなものです。

わたしにとって「紙の手帳」は、たいせつな文化のひとつ。新しい手帳で、新しい年のスタートです。

<日常の禅語>指月布袋(しげつほてい)

お正月。我が家の床の間には、仙厓(せんがい)和尚の「指月布袋画賛」の掛け軸(複製画)がかかります。仙厓さんは江戸時代の禅僧で、2000点以上の書画を残したと言われています。その最大のコレクターは出光佐三氏で、出光美術館は多数の作品を収蔵しています。仙厓さんは博多の聖福寺(しょうふくじ)の住職さんだった時期があり、聖福寺の搭頭(たっちゅう)のひとつで茶道を習っているわたしは、勝手にご縁を感じています。

さて「指月布袋画賛」。布袋さんが月を指さしている画が描かれています。ところが、その画のなかに肝心の「お月さま」は描かれていません。月は悟りの境地、指は経典を象徴していると言われ、「指先(経典)をいくら見つめていても、お月さま(悟りの境地)はその遥か彼方にあって、なかなか到達できない」という解釈が一般的です。

でもこの画全体の雰囲気からは、そんな禅の道の困難さ・堅苦しさは感じられません。伝わってくるのは、大らかさと、福福しさと、ユーモア。わたしはこの掛け軸の前に座ると、いつだって笑顔になります。解釈はあくまでも後世に付け加えられたものですから、鵜吞みにせずに、自分なりに仙厓さんご本人が言いたかったことを考えてみた方が楽しいのです。


花祭窯おかみ・ふじゆり(藤吉有里)

「古伊万里」の名で知られる肥前磁器の伝統工芸文化、技術を基にした窯元「花祭窯」のお内儀。おかみとして窯を支えつつ、自らもアートエデュケーターとしてMeet Me at Artを主宰する。

花祭窯(はなまつりがま)
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