その10「花祭釜・英国へ」

こんにちは。花祭窯おかみ・ふじゆりです。

少し前のことになりますが、12月に陶芸家でありアーティストである夫・藤吉憲典の個展でロンドンに行って参りました。オープニングレセプションは、ふだん滅多にお会いできないお客さまに直接ご挨拶できる、貴重な機会です。通訳さんの力をお借りしながら、多様な国にルーツを持つ、多様なお客さまとお話をすることができました。

レセプションには英国のクリスマスに欠かせない伝統菓子「ミンス」が登場。季節柄、街中のお店にもさまざまなミンスパイが並んでいましたが、もともとは各家庭にそれぞれの味があるそうです。焼きたてのミンスを口に放り込みながら、嬉しく楽しい時間を過ごしました。

藤吉憲典の所属する「Sladmore Contemporary」は、ロンドンで50年以上の歴史を持つ現代アートギャラリー。顧客には英国王室や、各国の実業家、文化人の方々が名を連ねています。アメリカのゲティ財団(ゲティミュージアム)で知られるジョン・ポール・ゲティ夫人や、現在ナイキのCEOであるマーク・パーカー氏は、藤吉がロンドンデビューして以来のコレクター。個展のたびに、お気に入りを見つけてコレクションに加えてくださっています。

藤吉憲典にとって作品を作る一番の喜びは、手に取った人が「これが好き」だと言ってくれること。ギャラリーオーナーのジェリーは、藤吉作品の熱烈なファンであり、彼が「芸術を生み出す人」に向ける眼差しは、いつも大きな愛情と敬意に溢れています。だからこそ、アーティストからはもちろん、鍛えられた審美眼を持つコレクターの方々からも、信頼されているのですね。

もともと英国に伝手があったわけではなく、英語が話せるわけでもなかったわたしたち。ロンドンで個展の機会を得るに至るには、試行錯誤の連続でした。詳しくお話しすると、膨大な文字数になってしまいますので、それはまた別の機会に。

2月の花遊び:花桃(はなもも)

2月の花遊び:花桃(はなもも)をひと枝、庭先からとってきました。春に向かう季節、寒さは厳しいながらも、梅、木瓜(ぼけ)、桃、早咲きの桜など、枝ものの楽しみがあります。大きな枝を扱うのはたいへんですが、姿がそのまま映えるような手ごろなサイズの枝を選べば、あとは花器に挿すだけ。自然の姿をそのまま楽しんでいます。

ふじゆりさんのコラム「日日是好日」好評連載中。過去のコラムはこちら


花祭窯おかみ・ふじゆり(藤吉有里)

「古伊万里」の名で知られる肥前磁器の伝統工芸文化、技術を基にした窯元「花祭窯」のお内儀。おかみとして窯を支えつつ、自らもアートエデュケーターとしてMeet Me at Artを主宰する。

花祭窯(はなまつりがま)
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