その7「音を味わう」


こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

先日、入門している茶道会のお手伝いで、博多にある日本最初の禅寺・聖福寺(しょうふくじ)さんの「開山忌」へ行って参りました。その日は聖福寺の開祖である栄西禅師の命日の法要。栄西禅師は、鎌倉時代に中国(南宋)から日本へお茶をもたらした「茶祖」といわれています。
→詳しくは聖福寺ホームページ

法要では、栄西禅師に奉納する「献茶」のお点前のあと、十数名のお坊さまが行列で読経しながら仏殿内を練り歩きました。お坊さまの声が重なり響き渡る仏殿内は、荘厳な雰囲気。読経の声を耳で聴くというよりは、音の震動を体で受け取る空間に、約1時間没頭して座っていました。

聖福寺さんではふだんは拝観を受け付けておらず、仏殿内に入ることはできません。「献茶のお手伝い」という役目があったからこそ、この貴重な体験に与ることができました。

考えてみれば、それも茶道に入門していたからこそであり、茶道に入門したのは「花祭窯おかみ」という仕事・立場ゆえ。仕事で携わること、仕事を深めるために学ぶことが、結果として自分の好きなことにつながって行くありがたさをつくづく感じます。

ところでわたしは「お経」の響きが好きで、ときどき般若心経を唱えたりしています。20代のころ、ある法事の席で「お経を暗唱できたらカッコいい!」と感じる出来事があったのがきっかけでした。

いまだ全文は暗唱できないので『ひらがなで読むお経』(大角修編著・角川書店)という本を頼りにしています。この本、コンパクトな新書サイズながら、原文・読みがな・意訳に補足説明つき。意味は考えず、ただただ声に出して、その音を味わっています。

11月の花遊び:一輪挿しにサザンカ

花器をまずひとつ手に入れるとしたら、わたしは一輪挿しをお勧めします。なぜなら花の少ない季節でも、花ひとつ、つぼみひとつで絵になるので。寒い季節に咲くサザンカは、強い味方。花が開いてしまうと散るのも早いのですが、だからこそ「今だけの一輪」を部屋のなかに取り込む嬉しさがあります。

ふじゆりさんのコラム「日日是好日」好評連載中。過去のコラムはこちら


花祭窯おかみ・ふじゆり(藤吉有里)

「古伊万里」の名で知られる肥前磁器の伝統工芸文化、技術を基にした窯元「花祭窯」のお内儀。おかみとして窯を支えつつ、自らもアートエデュケーターとしてMeet Me at Artを主宰する。

花祭窯(はなまつりがま)
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