九州北部豪雨からの復興 筑後川の鵜飼

2018年5月20日。
福岡県朝倉市の原鶴温泉郷、「筑後川の鵜飼(うかい)」がはじまると聞いて、地元の観光協会さんに問い合わせをしました。「本日からですよ。船頭さんに確認したら屋形船の席を確保できるそうです」とのことですぐに予約を入れました。

鵜飼を見るのは初めてです。ワクワクしながら現地に向かいました。本日からということで、川開きの神事がしめやかに行われ、日が落ちて辺りがすっかり暗くなってから屋形船に乗り込み岸を離れました。

朝倉市とその周辺は、昨年の「九州北部豪雨」の大きな被害にあった地域で、今でも仮設住宅での生活を余儀なくされている方もいらっしゃいます。

豪雨以降、筑後川の鵜飼も中止となっていて今年の再開も危ぶまれたそうですが、災害復興のシンボルとして、どうしても再開して、被災された方、また地域の人々を元気にしたいという強い思いがあり関係各者のご尽力で再開となったそうです。

屋形船には鵜飼を見に来た観光客に加え、NHKや地元のテレビ局の取材陣がたくさん乗っていました。

屋形船の船頭さんが言うには、
「鮎は本来、小石のある川底を“すみか”にするんよ。けんど、去年の豪雨で川に砂が沢山流れ込んで、川底の地形が変わってしもうた。砂出しやら、稚魚の放流やらしたけど、鮎がちゃんといるかどうかは誰も分からんのよ。鵜もブランクがあるし、やり方を忘れとるかもしれん。鵜匠も今までどおりやれるか不安がってたよ。」

鵜飼の再開といったものの、ちゃんと今までどおりの鵜飼ができるかは誰にもわからない…。そんな再開初日なのです。

上流の鵜飼の船のところまで、ゆっくりと筑後川を上ります。鵜飼再開を祝して、皆に“鮎の塩焼き”が振舞われました。香魚とも呼ばれる鮎の良い香りが口の中に広がり、丁度いい塩加減で美味!筑後川の風を感じながら川の幸を堪能しました。

上流に明かりのついた小船が見えると「あれだ!」「鵜飼船だ!」と屋形船が一気に賑やかになりました。

いよいよ鵜飼のスタートです。小船には紺色の作務衣を来た“鵜匠(うしょう)”が3~4羽の鵜をひもであやつっています。鵜飼が残っている場所は全国で十数か所。昔ながらのかがり火を使うところもあるようですが、こちらではバッテリーにつないだ電灯をあえて使っているそうです。川の中で鵜が鮎をくわえる様子までも見れるようにしているのだとか。

鵜は何度ももぐっては顔を出し、もぐっては顔を出し、鮎を探します。その中の一羽がくちばしに大きな鮎をくわえて水面にあがってきました。


鮎をくわえた瞬間! 尾びれがみえます。うまく撮れずに残念…。

びちびちとあばれる鮎をくちばしで上手に回して見事に頭からゴクリ。袋状になったのど元が膨らむのがわかりました。のどに入れた鮎は、鵜匠のカゴに集められます。その後も、1羽、また1羽と鮎を獲ってきました。

鵜匠との息のあった漁にたくさんの歓声があがる中、けなげに獲ってくる様子が可愛くもあり、獲っても食べられないと思うとかわいそうでもあります。と、隣のおじ様が「小さいのはそのまま飲み込んで食べているらしいよ」と教えてくださいました。

初めて鵜飼見物が復興再開初日で、鵜匠さん、船頭さん、観光協会のみなさんの「たくさんの方に来て欲しい!」という熱い想いが伝わってきました。川にも鮎が戻り、少しずつ、以前の姿を取り戻しつつある中、観光で足を運んだり、農産物の購入など、もう一押しの応援や支援が求められているのだと感じた夜でした。

【開催期間】
平成30年(2018)5月20日(日)~9月30日(日)

詳細は福岡県朝倉市のホームページで
http://www.city.asakura.lg.jp/www/contents/1297835812843/

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