【代表ブログ】唐津の炭鉱王「旧高取邸」

こんにちは、おつうじ屋代表の石井です。女性の腸を元気にする活動をしています。女性の目線で分かりやすく、楽しく情報を発信していきます♪

佐賀県の唐津市、唐津城のほど近くに「旧高取邸」という古いお屋敷があります。今は国の指定重要文化財となっていて、一般公開されているとのこと。ずっと気になっていたので、週末に行ってきました。

「高取さんのお宅?」、高取さんとはいったい何者なのか、邸宅の専門ガイドさんに聞いてみると、この邸宅の主は高取伊好(たかとりこれよし)という明治時代から昭和初期まで生きた“佐賀の炭鉱王”。炭鉱の事業で一財をなした人物とのこと。

炭鉱王と呼ばれるだけあって、広大な敷地に時代ごとに建て増しされた大きな邸宅が建っています。炭鉱王と聞くとどうしても映画などで見る“成金”的なイメージをしてしまうのですが、邸内に入り、ガイドさんに話を伺うとそのイメージが大きく覆されることとなりました。


残念ながら邸内は撮影禁止…

見学のルートの最初は台所、そして高取家の居住スペースから。土間のある昔の台所。かまどが一つ。バックスペースなのでさして華美なところはありません。

ここで高取伊好氏の人柄が出る場所がありました。それは使用人さんの休憩室。台所の横に、使用人さんが休憩や食事をとる部屋があるのですが、ガイドさんが「何か気付きませんか?」とひとこと。何もない明るい部屋…。何だろう??わかりません!とギブアップ。ガイドさんが笑いながら教えてくださったのが、“使用人の部屋なのに南向きの明るい、いい場所にある”ということでした。

この時代の使用人の部屋といえば、日のささないような北側の場所にするのが一般的だったそうですが、高取氏は、南向きの日当たりの良い部屋を使用人さんに、逆に高取ら家族が普段使うスペースは北側につくっていました。高取氏が使用人さんたちを大事に思っていたことがわかる間取りです。

さらに高取家の普段使いの部屋を見ると、驚くことに天井を張らず、板を敷いただけの質素なもの。高取氏は自らや家族の生活は質素倹約を旨とし、家族が使うスペースに贅沢をすべきではないという考え方だったそうです。使用人を大事に、家族は質素に…。最初に抱いた炭鉱王のイメージから大きく変わっていきました。


「旧高取邸」邸内見取図

逆に客人を迎える部屋には、美しいもの、珍しいものを揃え、来客を楽しませようという心遣いがふんだんになされていました。ガイドさんによると「高取邸で注目していただきたいのが“欄間(らんま)”“杉戸絵(すぎとえ)”“床柱(とこばしら)”の3つです」との事。

まずは随所にある欄間。贅をつくしたという感じではなく、控えめながらも、美しさ、部屋との調和、遊びごころを取り入れたものでした。特に印象的だったのが、映し欄間。部屋を暗くしたときに、隣の部屋からもれる明かりで透かし彫りした欄間の絵を壁に映しだすというもの。遊びごころのあるとても凝った造りになっています。

次に杉戸絵。通常はふすまに描かれる絵を杉の板に描いたもの。屋敷に絵師を滞在させて、長い期間にわたって描かれたものとのことでした。松竹梅と一枚ずつ描いた和風のものから、中国の山水画風のものまで部屋ごとのイメージにあわせて描き分けられています。

邸内にある和室の床柱は、立派かつ珍しいものが使われていました。これは威勢を表すものではなく、迎えた客人に、額と共に、珍しい床柱を見てもらい話の種としても持ち帰ってもらいたいという思いが込められていたようです。まっすぐに矯正してつくられた“桜の木の床柱”が印象的でした。

この屋敷は、石炭関係の取引先を迎える迎賓館的な役割を主としていたようで、2階には、宴会場、宿泊場としても使用できる大広間がありました。そこの廊下から、唐津湾が一望できます。廊下のガラスにはフチをすりガラスにしたものを使用し、1枚1枚が風景画として見えるような工夫がなされていました。美しい海を眺めるためというのはもちろん、松浦川から唐津湾を通り、石炭を積んだたくさんの船が全国に送り出される様子をお客さんに見てもらいたいという思いも強かったようです。

高取氏は“能”を趣味としていました。1階の大広間の畳をはずすとなんと能舞台ができるという大仕掛けを施していました。道楽として“能舞台”をつくったのではなく、“能”という日本の文化を唐津の地域の人々にも見てもらいたいという考えだったそうです。年に数回、能舞台を行っては、地域の人々に披露していたとのこと。私財を投じての文化的な活動は地域の人々に少なからず影響を与えたのではないでしょうか。

どこまでも自らを慎み、客人や炭鉱の仕事にかかわる人、地域を大切に思う高取氏の姿勢に驚くとともに、細部までこだわった意匠の数々に感動を覚えました。能舞台や屋敷の造りも含め、高取氏は美的感覚に優れた人物だったに違いないと思います。

ガイドさんが最後に驚きのひとこと。この客人をもてなす為の意匠を施した邸宅は、なんと事業が成功してから造ったものではなく、事業がうまくいかず資金繰りが苦しいさなかに造られたものだということ。どこまでも客人が先、自らが後の姿勢が、後の大成功へと繋がっていったのかもしれません。

自らを律し、控え目にして、相手を先に思いやる。

美しい意匠の数々を見ながら、相手を思い造りこまれた部屋々々をめぐり、高取伊好氏の思いを感じる小一時間の回遊を終えた時、心の中をスゥーッと爽やかな風が吹き抜けたようなそんな気持ちになりました。

*近くの観光地

唐津城。城内は資料館になっています。


唐津城から見える景色。弓状にカーブしている浜が有名な「虹の松原」です。
夏はキス、マゴチが釣れます。

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