その43「2022年前半のふじゆり的読書ランキング・ベスト5」

こんにちは。花祭窯おかみ・ふじゆりです。

あっというまに12月ですね。本日は2022年前半(1月~6月)の「ふじゆり的読書ランキング・ベスト5」をご紹介致します。

第5位『幸福論』(日経BP社)アラン著/村井章子訳

哲学書が自己啓発書に見事に化けた一冊。「もう深刻ぶるのはやめて のんきにやろう」の言葉にピンときた方は、ぜひ読んでみてください。

第4位『グッバイ、レニングラード』(文藝春秋)小林文乃著

自分がいかにソ連・ロシアのことを知らず、近現代史の認識が甘いかを突き付けられた本。世界情勢が混迷する今、読んでよかった一冊です。

第3位『逃げ道』(新潮社)フランソワーズ・サガン著/河野万里子訳

「サガン節」「フランスっぽさ」満載の一冊。喜劇と悲劇は紙一重、の面白さを堪能しました。映画化したものを観てみたいものです。

第2位『恐るべき子供たち』(角川文庫)ジャン・コクトー著/東郷青児訳

多感な時代の痛みがキリキリと蘇ってくるような一冊。その感性を抱えたまま大人になったコクトーの生き辛さを思う読書となりました。

第1位『中原中也全詩集』中原中也(角川ソフィア文庫)

中原中也の「全詩集」。まとめて読むと、さすがにすごいボリュームです。久しぶりの中也、あらためて言葉の選び方がツボにハマりました。

今回も、古典あり、哲学書あり、詩集ありと雑多な顔ぶれ。実用書・ビジネス書の類が1冊もランクインしなかったのが、我ながら少し意外でした。すぐに役に立つ本よりも、一見「役に立つ」とは縁遠そうな本の方が、長期的に見ると心の栄養になるのかもしれません。

年末年始は気忙しく過ぎてゆくことが多いですが、そのなかにゆっくり読書の時間をとることが出来たら素敵ですね。年明けには、2022年の年間ベスト5をご紹介したいと思います。

<日常の禅語>看脚下(かんきゃっか)

お茶会の準備で、お寺の本堂を掃除していた時のことです。揃えられた雪駄の写真に「看脚下」と書かれたポスターが目に入りました。一度はそのまま素通りしたものの、少しの間をおいて頭に浮かんだのは「脚下照顧」とどう違うのかしら?という疑問。雑巾がけをしながら「脳内禅問答」スタートです。

「看脚下」と「脚下照顧」。単純に字の並びで違いを考えてみました。共通するのは「脚下」すなわち「足元」。それを「看なさい」とするのか「照らして顧みなさい」とするのか。

「看」には「お世話する」の意味が含まれます。漢字を分解すると、「目」の上についているのは「手」なのですね。手と目を使って足元をみる。ストレートに連想すれば、やっぱり「履物を揃えなさい」になります。手が添えられているのは、足元が整っていないときに、それを手当て修正する意志の現れ。動作(行動)を伴うイメージが湧くところが、「照顧」との違いかな、と我流解釈いたしました。

足元は不安定ではないか?己の立脚するところを見失ってはいないか?なによりもまず、しっかり大地を踏みしめて立っているか?手当てすべきは手当てするのだよ、という声が聞こえてきそうです。「看脚下」のスパッとした音の響きも心地よく、お気に入りの禅語となりました。


花祭窯おかみ・ふじゆり(藤吉有里)

「古伊万里」の名で知られる肥前磁器の伝統工芸文化、技術を基にした窯元「花祭窯」のお内儀。おかみとして窯を支えつつ、自らもアートエデュケーターとしてMeet Me at Artを主宰する。

花祭窯(はなまつりがま)
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